ちょっとだけ思い出に生きてみようと思ってビリーは天井を見上げた。
瞬きせずに頭の中を引っかき回す。
そして何もないことに気付く。
特別だと思っていた思い出は結局それ以上のものではなかった。
特別に味付けをしたのは何だろう?
今に対する不満?
違う。
幸福な人もやがてはやはり思い出に生きるようになるのだ。
その人は幸福でありながら、やはり幸福ではないのだろうか。
種類が違うのだろうか?
同じ事柄に、同じ言葉に違う意味が含まれている。
それは自分にだけだろうか?
それともすべての人にだろうか?
「大きくなったら何になりたい?」
「何かになりたい」
子供はそんなことは言わないだろう。子供は何かになるものだから。
大人は?
大人は自分が何者にもなれないことに気付くものだ。
自分以上の何者にも。
医者になっても。芸術家になっても。
そして子供はやはり大人になるしかない。
ビリーは眉を顰めて天井に手を翳した。
この手もどんどん大きくなればいいのに。
この部屋を破るくらいに。地球を覆うくらいに。
こんな小さな希望だって叶わない。
脳にはドラッグが備わっている。
だからこの部屋から出る。こんな小さな希望だって叶わない。
立ち上がる気力もない。このままベッドに溶けてしまいたい。
「ビリー」
ドアの開く音。
「ビリー?寝てるの?」
彼女は自分をここから連れ出すだろう。エミーはきっとそうする。
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